歯ぐきから血が出る・膿（うみ）が出る

歯ぐきから血や膿が出る原因はさまざまですが、以下に一般的な原因を挙げて説明します。

歯周病

歯周病は、歯と歯ぐきの間にプラーク（歯垢）が蓄積し、プラーク内の細菌が毒素を産生することが原因で、歯ぐきや歯を支える骨（歯槽骨）が壊される病気です。初期段階の「歯肉炎」では、炎症は歯と歯ぐきに限られ、歯ぐきの腫れや出血がみられます。歯肉炎が進行すると、炎症は歯の根の先へと広がり、歯ぐきの出血や腫れのほか、歯の揺れや膿が生じることがあります。また、口臭などもみられるようになります。

根尖性歯周炎（こんせんせいししゅうえん）

根尖性歯周炎（こんせんせいししゅうえん）は、むし歯の進行などにより、歯の根元（根尖）に細菌が感染し骨の中まで炎症が広がった状態です。歯ぐきから膿が出たり、噛むと痛んだりする症状があらわれます。歯の神経（歯髄）の治療を行った歯が、根尖性歯周炎となる場合も多くあります。

智歯周囲炎（ちししゅういえん）

智歯（ちし）とは親知らずのことで、親知らずが原因となって歯ぐきや歯の周囲の組織が炎症することを智歯周囲炎（ちししゅういえん）といいます。親知らずが正常に生えている場合は問題がないことが多いのですが、ななめや横向きに生えていたり、歯ぐきや顎の骨に埋まっていたりする場合は、歯ぐきの炎症を起こしやすくなります。智歯周囲炎は、歯ぐきの腫れや痛みのほか、膿が出ることもあります。

全身疾患による影響

全身疾患にともなう歯ぐきの出血もあります。歯ぐきの出血がみられる可能性のある全身疾患には、血液の病気（急性骨髄性白血病、突発性血小板減少紫斑病など）、止血機構の異常、肝臓の病気などがあります。歯ぐきの状態を注意深く観察し、歯が原因ではないと考えられる歯ぐきの出血がある場合は、血液検査などを行う必要があります。

歯ぐきからの出血や膿が生じる場合の治療は、原因に応じて異なります。原因別の治療法をご説明します。

歯周病の治療

歯周病の治療の原則は、プラーク（歯垢）や歯石を除去するスケーリングです。

歯周病では、プラークに存在する細菌による炎症で歯ぐきが腫れ、健康な歯ぐきよりも歯と歯ぐきの溝が深くなります。この溝は「歯周ポケット」とよばれ、歯周ポケットを測定する検査により歯周病の進行度合いを確認することができます。この際に容易に出血する場合は、歯ぐきの炎症が生じているということになり、プラークや歯石を除去する治療が行われます。

重度の歯周病で深い歯周ポケットがあり、歯周病を再発するリスクが高い場合などは、歯ぐきを切開して、より深い部分や歯の間の歯石を除去する外科的治療が検討されます。自費での治療にはなりますが、歯槽骨や歯ぐきを増やす「歯周組織再生療法」という治療もあります。

根尖性歯周炎（こんせんせいししゅうえん）の治療

根尖性歯周炎（こんせんせいししゅうえん）では、歯の根の内部を洗浄・消毒し、薬剤を詰めて殺菌する根管治療が行われます。膿が生じている場合、膿の除去も行います。

根管治療では改善が見込めないような重度の根尖性歯周炎では、歯ぐきを切開して膿の袋を除去する外科的処置が行われます。

智歯周囲炎（ちししゅういえん）の治療

親知らずが原因で歯ぐきや歯の周囲に炎症や膿が生じている場合は、抜歯治療が行われることがほとんどです。歯ぐきを切開して膿を排出させ、感染が拡大しないように抗菌薬を服用し、腫れや痛みがおさまったら抜歯が行われます。

全身疾患の影響による歯ぐきの出血の治療

全身疾患が原因で歯ぐきの出血が生じている場合、原因となっている疾患の治療が必要です。また、糖尿病などの生活習慣病は歯周病と深い関係があることが指摘されており、糖尿病の方は歯周病が進行しやすいことが明らかになっています。したがって、糖尿病になりにくいような生活習慣を心がけることも大切です。